入試分析【国語】

 文章が上手な人は、難しいことを難しく書きません。難しいことをできるだけ噛み砕いて、易しく分かりやすく書くことができるのが、本当に上手な書き手です。

 

 国語入試問題に取り上げられる文章は、一回読んだだけでは何を言いたいかがよく分からないような、”下手くそな”文章です。誰が読んでもつるつると内容が頭に入ってくるような上手な文章は、入試問題には適していません。受験生全員が正しく理解してしまっては、点数に差がつきませんよね。

 

 さて、こんなことは最初から分かっていたはずですが、今年の公立高校前期の国語は…何だこれ。説明文、小説、古文、どの大問も相当難しい。実際に解いてみると、文句の一つや二つ言いたくなります。☞ 言ってみましょう。

 

【五】説明文 

 まさに上に書いた悪文の見本のような文章。具体例がほとんど示されず、頭の中でこねくり回したような抽象的な言葉がえんえんと続く…いや本当、読ませる気ゼロだろ。

 設問は、記述よりも4択問題が難しい。各選択肢の文が長すぎて、何を言いたいのか一目では分からない。いや、こんなところまで本文に合わせなくていいのに。

 記述問題(=本文からの抜き出し)の答えとなる部分を落ち着いて探せた者勝ち、です。

 

【八】作文

 一見、グラフ読み取り系の問題かと思わせて、実は違います。二つの資料を組み合わせて論を展開させるというアクロバティックなことをやらせようとして見事に失敗している、まさに問もいいところ。こんなの出しちゃ駄目だ。

 

 問題を再現してみます。

 

  方言が地域の広報活動などに用いられているということ、「方言を広く活用することには、どのような効果があるのでしょうか」という問いかけが文章で書いてある。

【資料1】「誰に対して方言を使うか」という調査結果を示すグラフ。

【資料2】 観光ポスターや企業、特産品の名前など、「方言の活用事例」が箇条書きで4つ並ぶ。

 

〈条件〉

 ① 二段落構成とし、十行以内で書くこと。

 ② 前段では、地元の人々に着目して【資料1】から読み取ったことをふまえ、方言の活用は地元の人々に対してどのような効果があると考えられるか、【資料2】の活用事例をもとにあなたの考えを書くこと。

 ③ 後段では、他の地域の人々に着目して【資料1】から読み取ったことをふまえ、方言の活用は他の地域の人々に対してどのような効果があると考えられるか。【資料2】の活用事例をもとにあなたの考えを書くこと。

 ④ 前段、後段とも【資料2】から選ぶ活用事例は同一のものとする。

 

 上の〈条件〉を読んで、何を書いたらいいか分かりますか?

 ここにグラフや資料があったとしても同じです。僕一回読んだだけでは分からなかった

 

 もともと作文問題というのは「条件」を使って受験生を一定の方向(=正解)へ誘導しようとしますが、今回は条件の文が下手くそなせいで、何をしたらいいか分からない。

 いや、やろうとしてることは分かります。【資料1】から読み取れる傾向を根拠にして、【資料2】から選んだ事柄を具体例として使いながら、自分の意見を書きなさいと、そういうことでしょう。

 

 でも作文は100点満点の12点。50分のテストだから作文に書けられる時間はせいぜい7~8分です。

8分で、こんな複雑なことやれない。

 

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 初日の一時間目がこんな問題だったとは…中3生の皆さん、よく頑張りました。難問にめげずに、次の数学、英語の時間は落ち着いて普段の力を発揮できたことは、自己採点の点数から読み取れます。

 

 本当に、よく頑張りました。

ニシダ